1. 横浜 JAM TOWN -Overture-
作詞・作曲・編曲:西寺郷太
Rap : 水田航生 & MASAHARU
2. おいでよ!ボート・バー “HEAVEN”
作詞:金房実加・西寺郷太 作曲・編曲:西寺郷太
Lead Vocal : 藤井隆
Rap : 水田航生 & MASAHARU
3. マスター、登場!
作詞・作曲:西寺郷太 編曲:西寺郷太・奥田健介
Lead Vocal : 筧利夫
4. TEMPLE / GRIND -Interlude-
作詞・作曲:西寺郷太 Remixed by 冨田謙
5. おいでよ!ボート・バー “HEAVEN” (Reprise)
作詞・作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Vocals : エリアンナ & ダンドイ舞莉花
6. エキセントリック・ガール -LIVE-
作詞:金房実加 作曲・編曲:西寺郷太
Lead Vocal : 松浦雅
7. あゆみ
作詞:金房実加 作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Lead Vocal : 筧利夫
8. 失速タイムライン -LIVE-
作詞:金房実加・西寺郷太 作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Duet : 筧利夫 & 松浦雅
9. ビニ傘 to real love
作詞:金房実加 作曲・編曲:西寺郷太
Lead Vocal : 松浦雅 & 水田航生
10. 写真にいない人
作詞:金房実加 作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Lead Vocal : 松浦雅
11. 夢の Dream Boat
作詞:湯川れい子 作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Lead Vocal : 筧利夫、西寺郷太、エリアンナ、ダンドイ茉莉花 & HASSE
12. 祈りの歌
作詞:金房実加 作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Lead Vocal : 東風真知子
13. FIRE! -Ballad-
作詞:西寺郷太・エリアンナ・ダンドイ舞莉花・MASAHARU
作曲:西寺郷太編曲:冨田謙・西寺郷太
Lead Vocal : エリアンナ、ダンドイ舞莉花 & MASAHARU
14. SAVE ONESELF -JAM TOWN MIX-
作詞:西寺郷太・藤井隆 作曲・編曲:西寺郷太
Lead & Background Vocals : 藤井隆
15. メトラセテ
作詞:西寺郷太・金房実加 作曲・編曲:西寺郷太
Lead Vocal : 水田航生 & 藤井隆
16. サンセット・ヒルズ
作詞:トシ・スミカワ 作曲:増田俊郎 編曲:冨田謙
Lead Vocal : 筧利夫
17.ROLLERBLADE 24/7
作詞・作曲・編曲:西寺郷太
Rap: MASAHARU
18. エキセントリック・ガール (Reprise)
作詞:金房実加 作曲:西寺郷太 編曲:冨田謙
Lead Vocal : 松浦雅
19. TEMPLE / GRIND
作詞・作曲:西寺郷太 Remixed by 冨田謙
Rap : 西寺郷太 & MASAHARU
20. スプリット・ハーバー
作詞:金房実加・西寺郷太 作曲・編曲:西寺郷太
Lead Vocal : 筧利夫、東風真知子 & 松浦雅
21. FIRE! -Finale-
作詞:西寺郷太・金房実加 作曲・編曲:西寺郷太
Lead Vocal : 筧利夫、藤井隆、水田航生 & 松浦雅
西寺郷太による全曲解説
01. 横浜 JAM TOWN -Overture-
僕は十代の頃から少年隊の熱狂的なファンでした。プロになり、縁あって、錦織さんと出会い、2001年には青山劇場で開催され続けていた由緒ある「PLAY ZONE」のテーマ曲〈プリマヴェラ ~灼熱の女神~〉の作詞を担当させてもらいました。2013年春、雑誌対談で久々に錦織さんとお会いした際、「俺が新しいミュージカル作る時は、音楽頼むぞ」と声をかけてもらったのが「ジャムタウン」物語の始まりと言えるでしょう。その年末、初めてのミーティングの時に紙1枚のプロットをいただきました。 今思い返せばそこには「父と娘の物語」「マスター、あゆみ、JJ」など本当にシンプルな設定と原案が書かれていました。「とにかく1曲作ってくれ」との依頼。さすがに難しいと躊躇していたら、錦織さんがはっきりと「郷太、ミュージカルは、演出家よりも音楽家が偉いんだぞ」とおっしゃったんです。「物語は音楽を受けて俺が作るから任せろ」と。その言葉を胸に、2014年2月にテーマ曲となる〈FIRE!〉を作りました。そして、次にオープニングを飾るこの〈横浜 JAM TOWN -Overture-〉を作りました。のちに、JJ役の水田航生君が「郷太さんの作る音楽での舞台は、『ソウル・ミュージカル』って感じがします」とインタビューで語ってくれたのは嬉しかったですね。最初、何もないキャンパスに所信表明のような気合いを込めて、この曲を作りましたから。港町ヨコハマ。コンテナで運ばれてきた積荷を、上げ下ろす若者たち。終業時間がサイレンで告げられ、それぞれが缶ビールをプシュっと開ける。それを合図にミュージカル「ジャムタウン」の幕が上がるのです!
02. おいでよ!ボート・バー “HEAVEN”
2014年のトライアウト時から、「MABUDACHI 24/7(マブダチ・トゥエンティ・フォー・セヴン)」として存在した楽曲。本公演に向けて脚本が変更されたことで、出演するメンバーの役名と彼らが置かれた状況をメロディに乗せて説明する曲に書き換えました。ボート・バー“HEAVEN”の常連客たちによるセリフも飛び交う、モータウン・ビートの楽しい曲です。藤井隆さんはご存知の通り吉本新喜劇で鍛え抜かれた天才的なコメディアンであり、舞台役者。しかしこの曲で僕は歌い踊る「アイドル」藤井隆の爆発する魅力に焦点を当ててみました。後半のチープなリズムに乗ったおまけパートは、スタジオでの僕との即興のやりとりから生まれた藤井さんによるアドリブ。正直オモロすぎて今この文章を書きながらも、にやけてます(笑)。
03. マスター、登場!
2014年11月初頭。筧さんも含めた最終ミーティングをした際、錦織さんが「郷太、〈マスター、登場!〉って感じのさ、憂歌団とかさ、ブルージーで、スリーコードでしみる感じの歌作ってよ。俺の好きだった赤レンガ倉庫も今は倉庫じゃない、みたいなさ。昔はさぁ、もっと倉庫が並んでてさ、俺たち(少年隊)よくあそこでロケとか写真撮ってたのよ」
その言葉を受けて、すぐにその場で思いつき「赤レンガ倉庫も~、なくなっちまったよ~、俺の~愛した横浜~♪」と、僕が雰囲気たっぷりの歌声で歌ってみたら、居合わせたメンバーがウケてくれました(笑)。レコーディングしてみると、まさにオーダーメイドなだけあって筧さんの男らしいキャラクターと歌声にぴったりで嬉しかったです。
04. TEMPLE / GRIND -Interlude-
2014年にリリースした僕のソロ・アルバム「Temple St.(テンプル・ストリート)」に収録されていた変拍子8分の7ビートの楽曲「TEMPLE / SAHKE」。気まぐれな波でボート・バーが揺れる場面を想像した時にぴったりだと思い、「ジャムタウン」のバンドマスターでもある冨田謙さんにリミックスを依頼しました。
05. おいでよ!ボート・バー “HEAVEN” -Reprise-
錦織さんから「ブライアン・セッツァー的なロカビリー・ナンバーがレース・シーンに欲しい」と希望があり、〈おいでよ!ボート・バー“HEAVEN”〉を、冨田さんにアレンジしてもらうことを思いつきました。錦織さんも僕も愛するミュージカル映画『グリース』で、ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンが踊っている場面も浮かんできますね。
06. エキセントリック・ガール -LIVE-
松浦雅ちゃんが今まできちんとレコーディングや歌の仕事をしていなかったと聞いて、本当に驚きました。一言でまとめると、彼女は「とんでもないシンガー」なんです!彼女にとって「人前で歌うデビュー」が、2015年10月13日、渋谷のduo MUSIC EXCHANGEでの「ジャムタウン・ライヴ」。初めてのステージの緊張感すら楽しんでいる雅ちゃんの輝けるスタート地点をライヴ音源のまま真空パック。
07. あゆみ
ちょうど〈あゆみ〉と名付けられたこの曲のメロディを作り筧さんに渡す約束の時期、2015年夏に、僕に二人目の子供(長女)が産まれました。父と娘の物語である「ジャムタウン」に取り組み始めた頃には想像もしなかったことですが、娘に捧げる楽曲〈あゆみ〉を作りながらあまりにもタイムリーな巡り合わせに不思議な感慨を覚えたものです。
横浜と音楽、と言えば、僕のバンド、NONA REEVESとも昔から交流のあるクレイジー・ケン・バンド、横山剣さんが思い浮かびます。剣さんは大人の色気、男っぽさが魅力的ですが、グルーヴィーなビートとゴージャスなストリングスに包まれた70年代黒人ソウルの香りに骨太の歌声は合うんですよね。筧さんのビターでまっすぐな歌唱は、すべての「父性」を象徴する魅力に溢れています。
08. 失速タイムライン -LIVE-
錦織さんが「俺は、今回の曲の中で〈失速タイムライン〉が一番好きだ」と一緒に飲みながら何度も繰り返し言う楽曲。作詞家の金房実加さんとのミーティングの中でこんな話をしたことがあります。それは「僕のずっと年上の先輩が10年前に離婚して、長い間会えなかった成人した娘をFacebookで見つけた。恐る恐る、友達申請したら断られて悲しんでいた」という話で、かわいそうなエピソードなんですが、SNS時代だからこその出会いと、傷があるんだなぁ、と。 筧さんの歌う父親パートと、雅ちゃんの娘パートは同じメロディの軌跡だけれど、淡々と平行線で決して同じ音程になることはない。しかし、ハーモニーになると美しい、という音世界。この曲も2015年10月のライヴ音源より。
09. ビニ傘 to real love
金房実加さんから頂いた歌詞に触発されてメロディを書くことも多かった今回のプロジェクト。この曲も「ビニ傘」という普段何気なく使うけれど、なぜか歌詞には使われない言葉を選ぶ彼女の絶妙なワード・センスに引っ張られて進んだ楽曲です。レニー・クラヴィッツが90年代初頭にプロデュースしたヴァネッサ・パラディ的な、60年代の香りのするガール・ポップを目指しました。
10. 写真にいない人
この曲も錦織さんの発想から生まれました。幼いころに別れたお父さんはカメラを抱えている側だったから「写真にいない」。「大きくなった娘が、レンズの向こうのお父さんはどんな顔で赤ん坊の私のことを写していたのだろう?と想像する、そういう気持ちが歌にならないかな?」と。このことも含めて「ジャムタウン」での錦織さんがジャッジされる歌詞や音楽面でアドバイスの的確さは驚くべきレベルでした。この曲も当初は通常の4分の4拍子だったのを、デモを聴かせて即座に「郷太、これハチロク(8分の6拍子)にならない?」と。突然言われて僕も最初は驚くのですが、シミュレーションして、よりよくなることばかりでした。雅ちゃんの凛とした歌唱は素晴らしいの一言。
11. 夢の Dream Boat
錦織さんが「湯川れい子さんみたいな人が、この曲だけ作詞してくれると嬉しいよね」とポツリと話されたのを受け、僕が、その場で湯川さんに電話して作詞依頼をしました。
マスターが若い頃に組んでいたバンドの唯一のヒット曲。しかし、実際はマスターが酔いつぶれて寝ている間に妻のマリが書いた歌詞だった。確かに、この曲だけは80年代、90年代当時の「ヒットメイカー」が書いてくれると物語に深みが増します。
その夜の電話では、彼女にごく簡単な物語の設定の説明だけしたんですが、翌日、詳しい内容をメールで送ろうと思ったのと入れ違いに、FAXがカタカタと音を立てはじめたんです。それが直筆で書かれた「夢の Dream Boat」でした。
たった数分の電話での説明で、湯川さんは素早く完璧な歌詞を書いてこられたんです。かつて湯川さんは僕に「私の歌詞を1文字も変えずにメロディを乗せたのは筒美京平先生だけよ」とおっしゃったんですが、そのエピソードに痺れた僕もプロとして一文字も直していただくことなく曲をつけました。
歴史に残る作詞家であり、日本に洋楽を届けた伝道師でもある尊敬する湯川さんとの共作。自分にとって記念すべき楽曲となりました。
12. 祈りの歌
東風万 智子さん演じる、マスターの元妻マリは、登場人物の中で唯一すでにこの世には存在しない人物。彼女は、歌手志望の娘あゆみや、夫のマスターと違って「音楽に生きる人を応援し、支える」立場だった。妻であり母親役でありながら、東風さん自身の放つまっすぐでキュートな「少女性」ともいえる魅力が歌声に含まれているのが素敵です。
シンセサイザーとメカニカルなリズムによって、亡くなったマリの神秘性を支える冨田さんの編曲もさすがです。
13. FIRE! -Ballad-
2014年夏の鈴木おさむさん脚本・演出、今田耕司さん主演の舞台『AVM』。僕が音楽と演奏・出演を担当したんですが、その時にエリアンナちゃんに出会い、その歌声に感激しました。そこで「ジャムタウン」のトライアウトにもお誘いしたんです。当初から、彼女のようなスーパー・シンガーが歌の力を極限まで発揮出来る曲を用意したかったんです。まさにホイットニー・ヒューストンがここにいるのか、と錯覚するようなエリアンナちゃんのエモーショナルな歌声、そしてダンドイ舞莉花ちゃんの歌声のコケティッシュなスピード感。ジロー役、トライアウト組でもあるMASAHARU の抑制したメロウ・ヴォイスもいい。
「冨田さんがさ、バーにあるウーリッツァーをぽろっと弾いて客が歌いだすみたいなさ、英語バージョンの〈FIRE!〉あったらどうかな?」これまた錦織さんのナイス・アイディアから生まれました。
14. SAVE ONESELF -Jam Town Funk-
藤井隆さんとは、近年、彼のソロ・アルバムの制作や、堂島孝平君との三人組ユニット「Smalll Boys」など、密に音楽活動を繰り返してきました。この〈SAVE ONESELF〉は、藤井さん自身のレーベル「SLENDERIE RECORD」から2014年6月にリリースされたアルバム《COFFEE BAR COWBOY》(名盤です!)のために僕が書き下ろした楽曲。現在、藤井さんと僕と冨田謙さんの三人で共同プロデュース・チーム「Takashiie, Temple & YT」を結成しているのですが、今回の「ジャムタウン」でもまさにその三人がステージで一緒に!そこで、僕が叩く生ドラムをアルバム・ヴァージョンに追加しました。藤井さんのダンス、冨田さんのオルガン・ソロも含め舞台で演じるのが楽しみです。
15. メトラセテ
〈メトラセテ〉は、JJ、水田航生君のみずみずしいダンサーとしての魅力を堪能出来るファンク・ナンバー。僕が敬愛するマイケル・ジャクソンやプリンスのミネアポリス・サウンドに近い、ベースラインの繰り返しとリズムの隙間の中で心地よさが生まれる構造の楽曲です。2014年秋のトライアウト時には重要な楽曲として披露していたので、その直後の2015年春にマーク・ロンソンとブルーノ・マーズが〈アップタウン・ファンク〉を世界的大ヒットにした際、「俺が〈メトラセテ〉でやりたかったんこの世界観やでー!俺の方が早いー!」と悔しかったですね(笑)。
錦織さんは金房さんが脚本に書かれたタイトル〈メトラセテ〉を見た、まだ曲や歌詞がない時点から、「〈メトラセテ〉っていいよな。なんかジャニーさんが好きそうな言葉選びなんだよ」と金房さんの才能を絶賛していました。
16. SUNSET HILLS
2年前、僕をミュージカルの音楽担当に指名するにあたって、錦織さんから最初に頂いたテーマに、柳ジョージさんとレイニー・ウッドの「FENCEの向こうのアメリカ」がありました。敗戦の余波による基地の存在によって、アメリカ文化と日本が衝突し、愛憎とともに混じり合う町、横浜。だからこそ強調される、憧れとジレンマ。錦織さんが強い想いを持って推した、柳ジョージさんの代表作〈SUNSETHILLS〉は、このミュージカルで唯一、西寺郷太作曲ナンバーではない曲。筧さんの力強い歌声に若者たちが混じる瞬間、舞台人として生きてこられた錦織さん、筧さんが、新しい世代に「忘れてはいけないもの」を刻もうとする姿勢に胸を打たれます。
17. 横浜 JAM TOWN -Rap-
南米ベネズエラで育った MASAHARU。2014年のトライアウト時にはJJ役を務め、「MABUDACHI 24/7」の中間部に存在したヒップホップ・パートでラップを披露していました。脚本の都合上、一度は消えたこのパート。これまた「あのさ、俺『ディファネトリー』の部分好きだからさ、ローラーブレードのシーンで使っちゃおうぜ」という錦織さんの鶴の一声で最後の最後に奇跡の復活(!)。
ハッスルしたMASAHARUが「郷太さんのビートが気持ちよすぎて、ラップ作っちゃいました!」と満面の笑みで頼んでない部分まで増やして送ってきたので、ちょっとムカつきましたが、かっこよかったので採用しました(笑)。
18. エキセントリック・ガール -Reprise-
ローラーブレードのシーンを盛り上げる、冨田謙さんと、ギタリストのカシーフによる〈エキセントリック・ガール〉のソリッドなリアレンジ。
19. TEMPLE / GRIND
世界的ダンサーの YOSHIEちゃんと、「ジャムタウン」で会えたことは僕の人生の宝となりました。Oguri君、HASSE君をはじめとする素晴らしいダンサー達が稽古場で真剣に踊る姿。音楽家としてこれ以上の幸せはないです。
20. スプリット・ハーバー
〈スプリット・ハーバー〉は、「ジャムタウン」において最も壮大な曲と言えるでしょう。この2年間、僕は錦織さんと家が近所のこともあって、たぶん誰よりも一緒に飲みました。舞台の成功に向けて、まさにバーで(ボートじゃないですけれど)日々相談してきました。中でも特に、父と娘、そして元妻(母)がひとつになるクライマックス・ナンバー、この〈スプリット・ハーバー〉の意味や響かせ方については、とことん話し合いました。
トライアウト時から進化した最終形はトランペットの三浦千明さん、サックスの加藤順子さんの生ブラスに、僕の叩くドラムロールまで加わり、怒涛の展開に。そして、なにより大人数でのど迫力のコーラス!歌唱指導の大島吾郎さんには、この曲に限らず全編に渡り数々のハーモニーのアイディアを頂きました。
21. FIRE! -Finale-
錦織さんが最初のミーティングで言ってくださった「郷太、ミュージカルは、演出家よりも音楽家が偉いんだぞ」という言葉。そして「物語は音楽を受けて俺が作るから任せろ」という言葉…。それだけにすがりついて20曲以上、BGMを加えれば30曲以上の楽曲をこの「ジャムタウン」のために作り上げました。その象徴となるのがやはりこの曲、〈FIRE!〉です。
錦織さんは、音楽家「西寺郷太」を信じるという約束を最後まで守ってくれました。なんとこの2年間、いわゆるボツ曲が一曲もなかったんです(!)。これは凄いことです。
ギタリストの NONA REEVES奥田健介、カシーフ、ベーシストの村田シゲ、キーボーディストの嶌岡大祐君、稽古ピアノの杉田未央ちゃんも含む「ジャムタウン」ミュージック・オールスターがこの曲で演奏してくれています。2014年8月のトライアウト・オーディションの時も300人以上の若者達が YOSHIEちゃんの指揮の元、この曲で踊りましたね。トライアウト公演で歌ってくれた若者達を含む、全キャストとスタッフの皆さんに感謝しています。
そして、今…。まさに大団円を迎えるCDヴァージョンとして〈FIRE! -Finale-〉はここに完成。アルバムも、ここで終わりを告げます。
しかし、CDアルバムとしてリリースできる満足感とともに、本当のフィナーレは舞台上でしか完成しないのではないか?との思いも強くなるのです。その体験やきらめきの瞬間は、CDという光る円盤にすべて収められるものではないと…。
それでも、僕はいいと思うんです。演者と観客、生身の人間がぶつかり合って生まれる歌と踊りのハーモニー。それこそが、ミュージカル音楽。でも、その楽しかった瞬間を封じ込め、CDで何度も何度も味わえることも幸せなことですから。
西寺郷太 (NONA REEVES) 2015年12月24日